ARTandARCHITECTUREREVIEW July 2011
特集:アジアグローバルシティ vol.1 北京
INTERVIEW「中国から都市計画を考える」
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劉域 藤村です。ご無沙汰しております。今回、私ども『ART and ARCHITECTURE REVIEW』では アジアの各都市の動向を探りつつ、東京がグローバルシティとしてどのような方向を採るのか議論していきたいと考えております。 そこで今回は東京への留学経験もあり、北京をベースに各地でプロジェクトを展開されている劉さんに質問をさせて頂きたいと思います。
------------------------------------------------------------------------------------------------- 周知のとおり、中国で本格的に都市化が開始されたのは1979年からですが(当時の都市化率は20%)、2010年まで約30年の時間を経て、現在、都市化率は47%となっております。これは日本の1957年のレベルに相当するものです。ただし日本と異なっているのは、中国では都市化が進行すると同時にグローバル化、工業化、現代化、情報化といった改革も開始されている点です。これは都市構造の変化にとどまらない、国家と社会、経済、産業、生態、文化、さらには価値観の変化をも含めた全面的な転換であり、「三千年以来の大変局」といえます。 30年間、大規模かつ高速的な発展を続けてきたことは、環境、農業、生態などの方面に危機をもたらしました。近年、国から発表された中国初の国家土地空間の開発計画―<全国主体功能区計画>―では、未来の中国における国土の空間的な目標が明確化されており、建設を促進する際の構造的、戦略的、基礎的な保護計画がうたわれております。そのうち、国土の都市化の主要なパターンは「二横三縦」であり、これは東部沿海の大都市圏のレベルを向上させ、中西部の新しい地域の成長を促すものです。同時に、農業戦略の主体として、全国に「七区二十三帯」を構築し、全国耕地の生産数量と品質を保障しています。また国土の生態のなかに「二障三帯」の原則をもうけ、無秩序な開発を制限しています。 同時に、鉄道システムと高速鉄道の建設速度及び運営距離は、すでに世界トップとなっております。また国家戦略において、東アジアを中心とし亜欧大陸を一体化する交通計画を構築することは、中国の都市化を促進するとともに、グローバルな戦略の一環ともいえます。日本の「新全国総合開発計画」に比べ、中国の都市化は内部の構造転換であるのみならず、周囲の国家への産業的、経済的影響も深遠であります。 (1-2)UAAのようなアトリエ型の設計事務所に期待されている役割は何だと思われますか。 「アトリエ型」の設計事務所は、中国ではここ10年ほどで発展しはじめましたが(一般には建築の設計事務所であり都市計画には関わらない)、非常に弱小です。中国の土地国有制と国家資本主義の下では、都市の高速的な発展の推進力は政府と市場であり、そこでは「国営大型設計院」が、国家と政府の意志を代表する表現者としての役割をはたします。UAAはそれと異なり、設立当初から都市計画と建築をメインとし、両者を区別することなく総合的に研究を続けてきました(UAAは「都市化建築アトリエ」の意)。2004年から現在までの活動のなかで、中国の大規模性、階層社会、複雑な状況といった特徴に対し、思考と経験を積み重ね、国外の傾向を取り込みつつ、「高密度生存」「砂漠化生存」「エネルギー都市」などの観点を提出してきました。UAAの思想と問題意識は、中国のこれからの30年間における都市化発展の第二段階を模索するにあたり、啓蒙的な効果があると期待しております。
(1-3)かつて日本では、「メタボリズム」が都市設計のコンセプトや思想についてムーブメントを起こしていました。現在の中国にそのような動きはありますか。 現在の中国は、「思想と理論を喪失した時代」といわれます。中国には大規模の「都市計画」があるものの、際立った計画思想や理論が欠落しています。都市開発は市場と投資の産物であり、さらに、建設GDPは政府自らの行政実績と直結するため、理性的な思考や市民意識の介入が難しいのが現状です。 しかし、日本の「メタボリズム」のような都市論において、その影響力は建築界に限定されていたのではと感じています。特に、日本の土地私有制、政府の権限、商業のあり方や市民の要求などに対応していなかったように思えます。一方、中国では土地国有制の下で都市計画が実行されるという点が、大きな可能性を持っていると思われます。すなわち、新たな都市モデルは、国家政府、資本、市場需要という三つの要素が備わっているとき、ある方向へとシフトされ、実現されることが可能となります。さらに、現在では、「エコロジー、快適な居住環境、持続可能な発展」の価値観が浸透しつつあり、新たな都市モデルの可能性が模索されつつあります。
(2)UAAの都市設計思想 人類の大きな歴史的時間軸の中でのグローバル化という流れから俯瞰すると、『フラット化する世界』ともいうように、文化、生産、消費形態が均質化しつつあります。レム・コールハースの「ジェネリックシティ」にもあるように、「都市や地域の固有性が消えていく」のは一般的な問題であるかもしれないと悲観的に感じています。当然、中国で同様な現象が加速した場合、更に厳しい状況が予想されます。広大な中国の各都市には、悠久の歴史、多くの民族、文化が混在し、さらに経済レベルと気候条件も大きく異なります。したがって、それぞれに特質的な都市モデルがあるはずです。しかし、中国の多くの都市が、ニューヨーク(高層化)モデルを目指し、伝統的な都市は、西安(旅行化と商業化)モデルを目指しています。これは文化と主体性の喪失を物語っています。しかし、グローバル化の流れの中で、UAAは中国の都市と社会構造の変化の可能性に注目しなければなりません。 1.垂直性と複雑性: 現在、中国の急速な都市化は、グローバル化、工業化、情報化、社会構造の転換が同時に発生し、垂直的に存在します。すなわち、近代都市の発展過程が、一気に集約化されています。ここには、近代都市とは異なる都市構造と複雑性が強く存在しています。しかしながら、問題は「方法の元帥である」とされるように、多様に変化する社会の複雑性と各発展段階の垂直性は、新たなモデルと思想を生みだす根源地になり得ます。
2.規模とスピード: 中国の絶対数を誇る人口は、中国の急激な都市化を決定する要因の一つです。その中で、都市計画では、市場化、行政の粗暴な目標の執行が第一義的に優先されてきました。そして、わずか30年間で想定された都市の規模をこえると同時に、自然環境、用地効率、歴史的文化などの損失が大きく表面化しました。
私たちは、中国の「都市規模」を想定した自己システムを再構築し、さらに、都市計画の開発モデルを変革することが時代の要求であると考えます。
3.流動性: 中国の人口は、20年後には、15億人になると予想されます。増加した人口の多くは、農村部から都市部へと流動し、都市構成、用地、交通、戸籍管理と社会理論が大きく転換することが予想されます。今後、このような人口流入を想定した都市計画が要求されます。
4.資本+権利の可能性: マルクス思想はヨーロッパに発祥し、中国では共産主義として実践されてきました。そして、開放政策以降、資本主義の市場原理が導入され、いまだ世界都市発展史上に類をみない国家資本主義として体制化されています。そこにおける都市の可能性もUAAの考察対象となります。
(2-2)日本の都市構造は東京という大都市と地方都市の集合により構成されていますが、戦前はドイツを模した小都市主義を導入しようという考えもあったようです。中国の国土全体の構造について、どのような構造を導入するのがふさわしいと考えておられますか。 まず中国には、人口が多く、土地が少ない、資源不足(建築可能な土地が国土総面積の8.5%)、耕地可能面積が世界の他国の平均レベルを下回る、といった特徴があります。このような巨大な人口によってもたらされたのは、過度の都市化ではなく、都村化=農村の都市化です。次に、中国には地域によって地形、気候、資源環境、人口・民族、産業・経済などがかなり異なっているため、単一の都市モデルでは大きな発展を遂げるのは不可能です。
2011年から2030年にかけて、約3億の人口が農村から都市へと押し寄せ、全国90%以上の人口が東部沿海地域に密集した都市に集中する見込みです。そのため、どのように地域経済の特徴にあてはまる「都市間ネックワーク」を作るか、どのように産業パターンの相互作用のある都市群を作るかという問題は、地域的な自給自足と共存の目標を達成することに関係があると思います。また、地方政府が地域調整、税制、行政間の主体性を持っているがゆえに、彼らを主導とした地域産業を生かした新しい経済システムを作るのは、一つの方法かも知れません。
要するに、ヨーロッパ、アメリカ、日本などのような先進国がすでに世界都市化の第一段階の発展を遂げて「スマートシティ」、「線状都市」、「ジェネリックシティ」へと変化しつつあるなかで、中国、インド、南アメリカのような発展途上国は、都市を縮小するのではなく、拡大し巨大化しています。これらの国々が世界資本に果たしている役割と人口規模を考慮すると、そこには新しい都市モデルが要求されます。同時に、途上国が世界の都市化を推進する原動力となることによって、世界的な都市の発展は、新たな段階に入ることが予想されます。数十億の人口を抱える発展途上国の都市において、その持続可能な発展モデルを探ることが、都市論の主要テーマになると思います。
------------------------------------------------------------------------------------------------- 劉域 1970年中国内モンゴル生まれ。清華大学、中央美術学院環境デザイン学科卒業。東京大学日本博士課程中退。2004年UAA設立 ------------------------------------------------------------------------------------------------- 藤村龍至 1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所主宰。2010年より東洋大学専任講師。 ------------------------------------------------------------------------------------------------- |